恋の勝者
- ver.A
全国大会への切符を争う、事実上決勝戦のようなかつてない好カードゲーム。
フェンスに群がる沢山のギャラリーが見守る中、そのゲームの勝者となったのは
左腕の故障を引きずりながらも全力を尽くした、部長・手塚率いる青学であった。
全国でもトップクラスの実力を持つ手塚に、同等の実力の持ち主である
氷帝学園部長・跡部は勝利を得たものの、この試合は団体戦である。
延長戦にもつれ、青学1年生レギュラー・越前リョーマに敗れた氷帝は団体戦敗退が決まった。
だが、試合に負けた氷帝の去り方は、いっそ潔いものであった。
・・・と、青学部員たちは誰もが思っていたのだが。
ここ最近その認識を改めざるを得ない光景をよく目にするようになった。
そう、今この目の前でも。
「・・・また来たの? アンタ」
「何度でも来るさ。お前にYESと言わせるまではな」
「ふ〜ん、ご苦労なことだね。今のうちに諦めたら? そんな事言う日は一生こないから」
「分かってねーなぁ、お前。すでに俺達は公認の仲なんだよ! なぁ、樺地?」
「ウス」
「なっ、ナニ言ってんの?! っていうかコイツなんとかしてよ、樺地さん!」
「なんで樺地は”さん”付けで、俺は”コイツ”なんだよ(怒)
俺にはな。跡部景吾という麗しくも・・・」
「レギュラー集合!!」
「! ウィ〜ッス。じゃぁね、跡部サン♪」
「おいっ、リョーマッ!! 待て!!」
先日の試合以来、氷帝学園テニス部部長こと跡部景吾は、放課後になると青学のテニスコートへ姿を見せるようになった。
お目当ては誰かと言うと、試合の勝敗を決定付けた越前リョーマであることは、彼の行動を見ていれば誰の目にも明らかで。
跡部はリョーマを見つけてはちょっかいを出し、素気無くされているのだ。
ただ試合を申し込んでいるのであればまだ話は別なのだが(そうであればリョーマも喜んで頷くだろうが)、跡部曰く「俺のモノになりな、あ〜ん?」・・・との事。
ここで言う「モノ」とは恋人の意味であるらしく、更に付け加えるならば跡部の頭の中ではすでに挙式の段取りまでできいるそうだとか。
毎日のように放課後に現れてはしつこいラブコールを続ける跡部は、ある種のストーカーのようである。
そんな跡部を追い返そうと、初めのうちは青学レギュラー陣も頑張っていたのだが、ナニをドウ言っても応じず更にエスカレートしていく跡部に対し、所詮は他人事。諦めるのは早かった。
・・・手塚以外は。
「ウス」
「なんだ樺地? チッ、また奴からのメールか」
メールを開くと今日もお決まりの文章が並んでいる。
『跡部、さっさと手を引け・・・・・・手塚』
「ハッ、諦めが悪いんだよ、手塚! リョーマは既に俺のモノだっていうのがまだ分かってねーみたいだなっ」
左腕の治療に九州へ行っているはずの手塚から跡部にメールが届くのはもう何度目のことか。
リョーマを心配した青学のタマゴ・・・もとい母こと大石から”リョーマ危機”の情報を受け取った手塚は、流石に治療は抜け出せないものの、せめてもの妨害として跡部の襲来を敏感に察知しては、毎回々忠告メールを送っているのである。
なぜ跡部のメールアドレスを手塚が知っているのか・・・とか、跡部もイヤなら着信拒否すればいいのに・・・などと突っ込みたいのは山々だが、それは進行上の都合という裏事情でスルーしていただきたい。
とにかく、手塚のまめな妨害もひとえにリョーマへの・・・と、これはまた別のお話と言うことで。
「・・・いつから俺がアンタのモノになったのさ」
「リョーマ!」
集合をかけられたはずのリョーマが、いつの間にか跡部の後ろに立っていた。
「全く、アンタって人は。でも」
「でも、何だ?」
リョーマは跡部を上目遣いにチロッと見上げた。
その瞬間、跡部の頬にサッと赤味が差したのは気のせいではあるまい。
普段からそっけない態度をとられているのに、急に違う態度を取られたら。それがいかに跡部だとて平静ではいられないだろう。
結構忘れがちな事だけれど、跡部だってまだまだ中学3年生なのだから。しかも相手が本気で口説いている(談・跡部)相手ならばなおさら平常心でいられずはずもない。
「試合して・・・」
「そんなことでいいのか? なら!」
「で、俺が勝ったら考えてあげてもいいけどね」
珍しく。ホントーに珍しくリョーマが跡部に向かって微笑みかけると、跡部のテンションは一気にHeight!(笑)
しかも、妙にハイになってしまった為、それまで口説いていた(のか?)ことをすっ飛ばして、頭の中はテニス一色になってしまっている。
流石(なのか?)、腐っても氷帝学園テニス部・部長。立派なテニス馬鹿である。
「なに?! 俺に勝てるとでも思ってるのか、あ〜ん? 樺地! ラケットだ!!」
「ウス」
かくして、勝手に青学のコートを借りてリョーマと跡部のゲームが始まった。
普段ならば直ぐに止めに入るだろう手塚も、今は九州の空の下である。
こんな面白いものを止めようとするのは、青学には誰一人としていない(笑)
(唯一心配する大石は、勿論周りに抑えられるので除外する)
「・・・いつになったら終わるんスかね、アレ」
「越前が跡部に勝つまでなんじゃない・・・?」
「ご苦労なこったな、フシュ〜」
「う〜ん、しばらくつづきそうだね。この騒ぎも。フフフ」
「今の段階で越前が跡部に勝つ確率・・・23%」
「み、みんなぁ〜! なにをそんなに冷静に見てるんだ?! 越前を守ってやらないと!!」
「大石、過保護〜! ダァ〜イジョウブだって、オチビなら!」
無責任なギャラリーたちを他所に、ゲームは始まっていく。
「それじゃぁ、いくよ」
「いつでもこい。どーせ俺が勝つんだからな」
恋の勝者は果たしてどちらか。
このゲームの結末を見るのは、もう少々先のことになりそうである。
ぐは〜・・・・ナニ書いてんだろ・・・私。。。跡部が別人28号。。。
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